お知らせNEWS

解説「育成就労(仮)」【ポイントは3つ】

外国人材の受入れ・共生に関する課題を洗い出し、外国人材を適正に受け入れる方策を検討することを目的とした「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が2022年12月から16回に渡って開催され、有識者会議の最終報告書が2023年11月30日に法務大臣へ提出されました。

ここでは、実際に発表された最終報告書をもとに「育成就労(仮)」のポイントを解説していきます。

1 制度の目的
2 育成就労(仮)のポイント3つ
3 監理・支援・保護の在り方
4 まとめ

1 制度の目的

  • ▼技能実習制度:【国際貢献】【人材育成】
  • ▼育成就労(仮):【人材育成】【人材確保】

技能実習制度は技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することが目的となっています。

育成就労(仮)では人材確保と人材育成が目的とされています。
このことから、実態に即した制度の見直しが期待されます。

2 育成就労(仮)のポイント3つ

【①移行時の日本語能力】
育成就労(仮)では、段階的に日本語試験へ合格することが求められます。

就労前 ①N5または相当講習の受講
特定技能1号へ移行するとき ①N4または相当講習の受講
②技能検定3級・特定技能1号評価試験の合格
特定技能2号へ移行するとき ①N3など
②技能検定1級・特定技能2号評価試験の合格

育成就労(仮)から特定技能1号へ移行する際、そして特定技能2号へ移行する際に、それぞれのビザに準じた日本語能力が求められます。


【②職種】
育成就労(仮)での受入れは、特定技能と同様の産業分野・業務区分とされています。

技能実習と特定技能では対象職種が異なるため、現在技能実習生を受け入れていても、育成就労(仮)の受入れができない企業が出てくる可能性があります。

ただ、育成就労(仮)が施行されるまでには2年から3年ほどの猶予がありますので、現在受入れ職種に含まれていない分野も、その間に業界をあげて各関係省庁への働きかけをすることで追加されていく可能性もあります。


【③転籍】
育成就労(仮)では転籍の条件が緩和されますが、2つのケースが想定されます。

1、やむを得ないケース
「契約時の雇用条件と実際の労働条件に相違があった場合」の転籍の範囲を、拡大・明確化し手続きが柔軟化されます。これにより、違反とまではならない落ち度であっても、業務内容の相違等の理由で転籍が認められるようになるかもしれません。
受入れ実施先に落ち度があった場合の転籍も認められやすくなる可能性が高まりますので、より外国人が働きやすい職場環境であることが求められます。

2、本人都合のケース
本人都合での転籍は、以下5つの条件をクリアすることとされています。

  • 1)同じ会社で1年以上の就労を終えている
  • 2)技能検定の基礎級合格
  • 3)日本語能力A1やN5レベルの試験への合格
  • 4)同一業務区分
  • 5)受入れ先企業の適切性

ただこの1番目の「同じ会社で1年以上の就労を終えている」に関しては審議が続いているため、2年、3年になる可能性もあります。

3 監理・支援・保護の在り方

新制度では監理団体の許可要件が厳格化されます。

【外部機関からの監視の強化】
外国人技能実習機構は、技能実習だけでなく特定技能の監理監督も行うため、労働基準監督署や地方出入国在留管理局との連携を強化させ、さらに厳格な監理のもとに制度の運営を行うことが予想されます。監理団体にはこれまで以上に法遵守の姿勢が求められることになります。

【新制度に係る許可の再取得】
育成就労(仮)に移行する際、監理団体は厳格化された要件で許可の取り直しが必要となります。許可の要件については審議中のため、今後も注視していく必要があります。

4 まとめ

今回解説をした有識者会議の最終報告書は2023年11月に発表された決定版になりますが、制度としてはまだ決まっていない部分も多くあります。 実際に制度が決定されるまでの間に最終報告書から変更になる可能性も十分にあり得ます。

2025年4月以降に新制度開始といわれていますが、決まっていない部分も多くあるため、今後の動向にも注視していきましょう。